地球上の微生物の大部分は純粋培養が困難な難培養性の微生物であり、かつ、単細胞の状態ではなく、バイオフィルムのような集合体として存在する。バイオフィルムの形成メカニズムや高次機能を明らかにするためには、バイオフィルムの構造と、そこに含まれる成分（微生物細胞、細胞外核酸、多糖、タンパク質など）を高い空間分解能で可視化することが重要である。しかし、分厚いバイオフィルムは光の屈折や散乱によりレーザー光が深部まで到達しないため、従来の光学顕微鏡法では観察が困難である。そこで本研究では、独自に開発した瞬間バイオフィルム透明化（iBC, instant Biofilm Clearing）法を用いて、試験管内および生体内において複数種の微生物が形成した複合バイオフィルムを観察し、任意の細胞の空間分布、細胞外マトリクス成分の局在、微生物間あるいは微生物-宿主間の相互作用などを明らかにする。